「福祉事務所に言っても仕方ない」

ルミコさん(18歳)のおかあさんから聴いた話でわたしは少なからずショックを受けた。
今はこうしてなんとか落ち着いたが、以前はルミコさんが悪友に軟禁状態にされて帰ってこれなかったことがあったという。悪友の下宿はここから500キロも離れたところにあったから、簡単に迎えにもいけず困ったという。ルミコさんはなんとか帰ってこれたようだが、暴力を受けていたようで体にいくつもアザがあった。
10代の子の子育てはたいへんだ。
それにしても、そんな話ははじめて聞いた。
おかあさんは言う。
「こんなこと、福祉事務所に言っても仕方ないと思ってこれまで言わなかった」
確かに、そうきかされても何もできないかもしれない。
でも、相談できる福祉事務所でありたいものだと、真に思った。
保護者と一緒に心配したり悩んだりする福祉事務所でありたいと思った。
これまで、福祉事務所はルミコさんのことを『就労指導』をしていた。
おかあさんを通して、「働かせなさい」と指導していた。
家で、こんな困ったことが起きているのに、状況をわからないままで指導していた。
信頼関係がなければ、ひとは相談しようとは思わないし、相談にならないのである。
それでは、本当の目的にいつまでたっても到達できない。
「指導」なんていって、上滑りにならないように気をつけねばならないと思う。

施設見学

花子さんの施設見学に付き合った。
花子さんは知的障害のある60代の女性で、現在一人暮らしである。
花子さんは最近、風邪をひいて下痢をして短期入院したことから、
一人暮らしへの不安が大きくなり、施設に入りたいという希望をもった。
夜、一人ぼっちなのが耐えられないようだ。
犬を飼っているけれども、それでも寂しさはうめられない様子だ。
さて、花子さんと共に施設の中を案内してもらった後に施設の人の面接を受けたが、
その面接はわたしにはややひどいものに感じた。
施設の人は
『通院や買い物にヘルパーの援助を受けつつも、
一応自分でも可能なのに何を求めて施設に入りたいと思うのか?』
ときいた。
理屈としてはそうだが、そんな聞き方をするなんて!?
わたしなら
『どうして施設に入りたいと思いましたか?』
ってきくけど。
施設での生活についての説明はほとんどなくて、花子さんの状況を聞かれてばかりなのであった。
わたしはなぜこんな詰問のような面接なんだろう?と思った。
施設の人の用語が難しくて本人が理解できないので、わたしが通訳したり。
花子さんに知的障害があるって伝えてあるのに、
優しくきくということの訓練ができていない施設の人たちであった。

テロでは国はよくならない

元厚生次官ら連続殺傷事件が起きているが、テロでは国はよくならない。
破壊をすることはできても。
テロに対抗するといってイラクやアフガニスタンに戦争をしかけるのも賛成できないが、
テロは何も解決をしない。
国民に代わって天誅を加えたつもりならとんでもない錯覚だ。
かくいうわたしだって、聖人君子ではないから、腹が立つ人はいくらもいるが、
憎いからといちいち殺していてはきりがない。
『そんな個人的な恨みではなく、もっと大儀がある』
とでも言いそうな犯行だが、殺してどうしようというのだ?
かつて、日本でテロがいくつも起きた時代があった。
先の大戦にいたる時代である。
その頃、世界は大不況で人々は貧困にあえいだ。
当時、テロに向かった人は義憤にかられたものであったろうが、
その行き着いた先は、言論の自由をなくし軍国主義のはてに、
世界中で戦死者2700万人民間人犠牲者2500万人(諸説あり)といわれる第二次世界大戦である。

自己負担のある生活保護

制度上は生活保護を受けているのだけれど、
現金での生活保護費は出ていない人がいる。
しかも医療費などの一部、自己負担を払う必要がある人がいる。
その人の収入(年金など)が生活費の基準を越えている場合で、
越えている分だけ自己負担を払うのである。
その自己負担額が、健康保険や介護保険の本人負担より少ない場合、
医療費だけ、あるいは介護扶助だけという生活保護を受ける人がいるのである。
医療費の大部分は、確かに生活保護費から出ているのだが、
現金での給付じゃないから見えにくい。
だから、なぜ生活保護なのに自分の方から払わなくてはならないのか、
なかなか生理的に納得できない人もいる。
これをどのように説明したらよいのだろうか?
グラフや図表を使えば、口で言うよりはもう少しわかりよくなるのではないかと思うのたが。
そこで、わたしは棒グラフを縦にしたり横にしたり、エクセルで作ってみたりするのだが、
なかなかわかりよくならない。
なんとかもっとすっきりとわかるようなものにならないものだろうかと思う。

たいていの人の場合、生活保護基準より収入が少ないので、
足りない差額分が生活保護費として支給される。
この場合医療費などは全額出るので負担はない。
この仕組みは、比較的わかりやすく理解をされる。
だが、生活保護基準よりわずかに収入が高い場合、
一部自己負担つきの生活保護というのが、たまにある。
けれど少数派ということもあって一般的でないし、
うっかりすると職員だって頭がこんがらがっくるのである。
特に、さかのぼって収入に変更があったりするとたいへんだ。
いったい生活保護費を出したらよいのか引っ込めたらよいのかわからなくなるのだ。
うちの上司も算盤があまり得意でないらしく、
時々わたしに説明を求めるが、肝心のわたしも数字に弱いのである。
それでも今はコンピュータが計算してくれるから、日割り計算なんかも本当に楽になった。
コンピュータが出したのだから間違いないだろう、で済ますこともできる。
一応、間違いがないことを電卓をたたいて確かめるけど。
しかし、クライアントに対してはやはりもっとちゃんとした説明責任があると思うのだ。
『コンピュータが計算したんだ(だから信じて)』では済ませられない。
どんなおばあちゃんであっても、少しはわかってもらわないとね。

約束してはすっぽかされ。

毎度、今度こそ、と思っていても来ないクミさん。
今日来たら、本当に久しぶりだ。
こういう約束してはすっぽかされるプロセスは、必要な過程だったのかもしれない。
すんなりといけば、苦労はないかわりに素通りしてしまう。
困ってみることも大事なことなのかもしれない。
これまで、彼女が引きこもりとはわたしは思っていなかった。
「引きこもりで困ってる」とはおかあさんは言ってなかったし、
第一、昼間はおかあさんも下の兄弟も家にいないのに、
一人だけ家にこもってるとは信じがたかった。
そもそも彼女がどんな暮らしをしているか想像ができなかった。
彼女には友達がいるから引きこもりじゃないと思っていた。
だが、彼女はどうやらたいへんに出無精なようだ。
どこかに遊びに行きたいとか、何か欲しいものがあるとかの意欲がすごく少ないようなのだ。
これは、引きこもりの一種だ。

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15年以上前に、偶然にも、社会福祉の道に入ることになりました。
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